マインドフルネスとは
マインドフルネスとは「今,この瞬間の体験に意図的に意識を向け,評価をせずに,とらわれのない状態で,ただ観ること」です。ここで言う「観る」には,見る,聞く,嗅ぐ,味わう,触れる,さらにそれらによって生じる心の働きをも観る,といったことが含まれます(日本マインドフルネス学会による定義)。
そのような意識の状態を達成する手助けとして,呼吸法や瞑想法の練習などがおこなわれます。ネットやテレビ,雑誌等で,大げさなくらいに宣伝されているので,何となくのイメージはおもちの方が多いかと思います。でも,それがカウンセリングとどういう関係があるのでしょう?
カウンセリングとマインドフルネス,どういう関係があるの?
カウンセリングに初めて来られる方の多くが,マインドフルネスとはほど遠い状態にあります。頭の中は過去や未来のことで一杯です。もちろん,ポジティブな内容ではありません。過去に対する後悔や悲しみ,未来に対する不安や重圧感などです。
それらのことが常に頭の中(や身体の中)をグルグル回っていますから,今のことなどに目を向ける余裕はありません。ちょっとした気候の変化にも気づきませんし,ひょっとすると今食べているものの味すら,ほとんど感じていないということだってあります。
そして困ったことに,こういう状態は長く続いてしまいがちなのです。なぜなら(言い古されたことばですが)「変えられるのは今だけ」だからです。過去や未来のことをいくら思いわずらっていても,そのループから抜け出すことは残念ながらむつかしいのです。
もちろんご本人もそんなことは分かっています。でも,そうせざるを得ないのが辛いところです。だからこそ,カウンセリングにおいて「今,ここ」に意識を向けるお手伝いをするのは,きわめて大事なことになります。
実際,マインドフルネスということばが使われるようになるずっと前から,カウンセリングにおいても「今,ここ」の重要性は言われていました。カール・ロジャーズの「来談者中心療法」などはそうですし,一般には過去のことに焦点を当てることが多いと思われているジークムント・フロイトの「精神分析」でも,面接中の「今,ここ」での感情などに意識を向けることが大事にされてきました。他にも多くの例を挙げることができます。
当ルームにおけるマインドフルネス
カウンセリングにおけるマインドフルネスの応用は,「マインドフルネス・ストレス低減法」や「マインドフルネス認知療法」などのように定められた手順に従っておこなわれるものと,通常のカウンセリングの中で,適宜,取り入れられるものとに分けられます。当ルームが提供するのは後者です。必要に応じて,ご自宅で練習をしていただくことも多いです。
私は以前からヨガが好きで,それが昂じて2009年にヨガの指導者の資格を取得しました(大学などで時折,指導をさせていただいています)。そうした経験から,ヨガに伝わる呼吸法や瞑想法が,ストレスの軽減や心の安定などに,いかに役に立つものか,身をもって感じてきました。ですから,当ルームでのカウンセリングやEMDRのセッションで,必要に応じて,呼吸法や瞑想法の練習を取り入れるようになったのは,ごく自然なことでした。
マインドフルネスはもともと仏教の伝統に由来するものであるのに対し,私のやり方はヨガに学んだものが多いのですが,ルーツは同じですし,目指すところはほとんど変わりません。